
製造現場のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する上で、ICカードを活用したシステムは、物理的なアクションをデジタルデータに変換する仕組みとして注目されています。
今回は、enebular(エネブラー)を活用した入退場管理システムについて、その概要についてご紹介します。
システムの基本的な仕組み
このシステムの最大の特徴は、そのシンプルさにあります。
- 社員証などのICカード(MIFAREなど)をリーダーにかざす
- リーダーがIDを読み取り、タイムスタンプ(時刻)と共にデータを送信
- データはGoogleスプレッドシートに自動記録される
これにより、従来の紙ベースの管理や手入力作業が不要になり、ほぼリアルタイムで「誰が」「いつ」「どこに」いるかのデータを取得できるようになります。
enebularの役割
enebularはこのシステムにおいて、デバイス(RaspberryPiやreTerminalなど)とクラウド(Googleスプレッドシート)の間で「翻訳機」のような役割を果たします。物理的なカードタッチという動作をデジタルデータに変換し、クラウド上にデータを保管する橋渡し役です。
また、reTerminalのような液晶画面付のデバイスを使うことでユーザーフレンドリーな設計になっています。
- カードをタッチすると「OK」と社員IDを表示
- 登録されていないカードの場合は赤字で「社員IDが不明です」と表示
現場では、このような視覚的なフィードバックが重要です。
データ管理の仕組み
記録されたデータはGoogleスプレッドシートで以下のように管理されます。
- タイムスタンプとカードIDはスプレッドシートの「タイムレコーダー」シートに記録
- カードIDと社員IDの紐付けは「IDリスト」シートで管理

導入のハードルと必要な環境
enebularはIoTを自分で開発して運用するためのプラットフォームであるため、基本的にはユーザー自身で構築することを前提としています。導入には以下のステップが必要ですが、その分コストを抑えることができます。
- RaspberryPiの設定
- 必要なソフトウェア(NFCライブラリなど)のインストール
- Google Cloud側の設定(サービスアカウント作成、API有効化など)
- enebularエージェントのインストールと設定
- 処理フローのインポートとデプロイ
必要な機材
- ラズベリーパイまたは専用IDターミナル
- カードリーダー(例:ソニーRC-S380)
- ICカード(社員証など)
- Wi-Fi環境(インターネット接続)
導入メリット
- 低コスト: 大掛かりな専用システムに比べて、コストを抑えられる
- 短期間での導入: 比較的短期間で構築・運用が可能
- 複数箇所への設置: 様々な入口やゲートに設置可能
- リモート管理: エネブラーの機能で一元的に状況確認ができる
- 使い慣れたツールでのデータ活用: Googleスプレッドシートでデータの集計・分析が簡単
応用可能性
このシンプルな仕組みは、入退場管理以外にも様々な場面で応用できそうです。
- 高価な工具や装置の利用記録
- 作業完了報告
- 各種点検作業の記録
元々はイベントの参加者リスト作成に使われていた技術が、工場の入退場管理に応用できるというのも興味深いポイントです。
まとめ
ICカードとenebularを活用した入退場管理システムは、低コストかつスピーディーに現場のDXを推進する第一歩として非常に有効です。物理的なアクション(カードタッチ)をデジタルデータに変換し、使い慣れたツール(Googleスプレッドシート)でデータを集約できる点が最大の魅力です。
今回は、産業用デバイスであるreTerminalとの組み合わせにより視覚的なフィードバックを追加してより実用性の高い仕組みとして紹介しました。
現場の課題に合わせてカスタマイズしながら、小さな一歩から始めるDXの具体例として、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。
参考
- 音声解説(NotebookLMで生成)
- enebular blog : 社員証タッチで参加者リストを自動作成
- enebular.com ユースケース解説ページ : ICカードで入退場をスマートに